特集 医師と法律 トラブル防止の心得と対策
【ケーススタディ】
③覚せい剤中毒者は警察に届け出なければならないか?
稲葉 一人
1
1姫路獨協大学法科大学院
キーワード:
守秘義務
,
通告義務
,
違法性阻却事由
,
個人情報保護法
,
ヒポクラテスの誓い
Keyword:
守秘義務
,
通告義務
,
違法性阻却事由
,
個人情報保護法
,
ヒポクラテスの誓い
pp.408-410
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100939
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医師が治療・検査の過程で,当該患者が禁止されている薬物を使用していることを知った場合は,どのようにすべきか.仮に,これを警察に通告した場合は,医師は守秘義務違反を問われるのか.
医師が治療の過程で知り得た事実は,これを漏らすことは許されない.これは,医師の倫理義務として,古くから守秘義務として知られている(ヒポクラテスの誓いには,「治療の機会に見聞きしたこと………は,他言をしてはならないとの信念をもって,沈黙を守ります」とある).また,この守秘義務は,法律上の義務に格上げされている(刑法134条「秘密漏洩罪」)し,近時の個人情報保護法の中でも,個人のプライバシー・個人情報への関心は高まっている.では,設問のように,患者が施用の禁止されている薬剤を使用していることがわかった場合にも,守秘義務を守り通すことが求められるか(法的に正確に分類すれば,①この事実を第三者〔たとえば警察〕に告げた場合に,患者から守秘義務違反を指摘されないか〔守秘義務違反〕,②むしろこの事実は警察に通報すべきではないのか〔通告義務〕という問いに分かれる〔表1〕).まずは,覚せい剤の場合について考える.
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