視点
公衆衛生としての覚せい剤への対応
山本 弘史
1
1厚生省医薬安全局麻薬課
pp.610-611
発行日 1998年9月15日
Published Date 1998/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901945
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わが国の薬物乱用問題の歴史は,戦後,覚せい剤の蔓延とともに始まった.戦中に軍において戦意昂揚などの目的で使用されていた覚せい剤が終戦直後の混乱の中で放出され,また当時,多くの製薬会社も製造販売を開始したことを反映して,覚せい剤犯罪の検挙者数は著しく増加し,昭和29年には,史上最高の55,664人が検挙された.これに対しては,覚せい剤取締法の整備による原料からの徹底した管理と取締の強化,社会環境の改善などにより昭和32年以後は一次的に鎮静化した.
しかしながら,その後,昭和45年から再び覚せい剤事犯は増加に転じ,昭和48年の覚せい剤取締法の改正によっても鎮静化せず,昭和55年から63年まで,検挙者数は2万人台を維持し第2次乱用期となった.この時期の特徴は,暴力団の資金源として韓国・台湾などを仕出し地とする覚せい剤が密売されたこと,青少年の乱用が顕著であったことなどである.徹底取締りの結果,平成に入っていったん1万人台の半ばとなり,また,ピーク時には11%を超えた未成年者比率は5%台へと半減したが,完全には鎮静化しなかった.
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