特集 薬物依存をめぐる諸問題
臨床からみた覚せい剤問題
佐藤 光源
1
Mitsumoto SATO
1
1岡山大学医学部神経精神医学教室
pp.858-864
発行日 1984年12月15日
Published Date 1984/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206965
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■はじめに
他の依存薬物の場合と同様に,覚せい剤の乱用や依存による障害には,つぎの二つの側面がある.その一つはおもに覚せい剤の中枢薬理作用に基づいて乱用者個人に起る障害であり,精神身体症状や後遺症などがこれに該当する,他の一つは覚せい剤の乱用や精神症状によって二次的に派生した社会生活面の障害であり,経済的な破綻,離婚,失職,犯罪など家族や地域社会をまきこんだ問題5)がある.これとは別に,現代社会がかかえる病理現象が今回の覚せい剤禍の背景因子をなすとの見方もある.
覚せい剤の乱用と依存,とくにその対策について考える上で当然留意すべきことは,覚せい剤取締法によりその輸入,製造,所持,譲渡,譲受,使用が禁止されている点で,乱用自体が犯罪であることである.この点を抜きにしてアルコールや睡眠薬の依存と同等に考えていると,対策を誤ることになりかねない.ここに覚せい剤問題の特殊性があり,医療を越えた総合対策が必要となる由縁がある.
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