EBM時代の生薬・方剤の使い方 [第5回・方剤編]
加味温胆湯
丸山 将浩
1,2
,
丹治 治子
1,2
,
来須 正幸
1,2
,
小林 誠一
1,2
,
鈴木 朋子
1,2
,
関 隆志
1,2
,
岩崎 鋼
1,2
,
荒井 啓行
1,2
,
佐々木 英忠
1,2
,
花輪 壽彦
3
1東北大学医学部老年・呼吸器内科
2東北大学医学部先進漢方治療医学講座
3光里研究所病院東洋医学研究所
pp.446-448
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100899
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神経伝達物質であるアセチルコリンは,神経軸索終末において,コリンからコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)と呼ばれる合成系酵素により合成される.そして,シナプス間隙においてアセチルコリンは分解系酵素であるアセチルコリンエステラーゼによって分解されることが知られている.アルツハイマー病(AD)は,神経変性に伴い神経細胞死に至ることによりChAT活性の低下を認めることと,それによってアセチルコリンそのものが枯渇することから認知機能障害が現れることがわかっている1).現在,ADに対する治療法として,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬によるアセチルコリン分解阻害療法が知られている.これは,AD病変に侵されずに残っている神経を効率よく機能させるために,アセチルコリン濃度を維持しようといったアプローチである.それに対して,合成系を活性化させることによりアセチルコリン濃度を維持しようといった治療法はあまり知られていない.
加味温胆湯の薬理学的作用機序
加味温胆湯は13種類の生薬からなる(表1).『衆方規矩』には,「~病後虚煩して睡臥するを得ず.~事に觸りて驚きやすく短期悸乏するを治す」とあり,古来より不眠症や神経症などの治療薬として用いられてきた.
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