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はじめに―高齢者の「物忘れ外来」受診動機とbiomarker研究の意義
高齢者は,自らの知的機能あるいは記憶機能の変化にっいて,漠然とした不安を抱いている。また昨今のマスコミ報道などから,アルツハイマー病がいっとはなしに「物忘れ」で発症することを知っている。最近のちょっとしたエピソード,例えば「財布をどこかへ置き忘れることが多い」,「老人会で昨日会ったのに今日になると名前が思い出せなかった」,「テレビのドラマを見ていて登場人物が何を言っているのか理解できないことがある」など,かっては経験したことのないことを経験すると,これが痴呆の始まりの何らかのアラームである可能性はないかどうか,“現時点”での医学的判断を求めて医療機関を受診する高齢者が増えてきている。これは,1999年から本邦でも,臨床の現場にアルツハイマー病治療薬としてのコリンエステラーゼ阻害薬が登場してきたことと無縁ではない。このアルツハイマー病治療薬の登場は,アルツハイマー病研究者が長年待ち望んできたことである一方,患者サイドでは「今は症状が軽くても将来進行する恐れがあるならば,今のうちから予防のための薬物治療を始めたり,ライフスタイルの是正を試みたりして,少しでも進行を遅らせたい」という新たな認識を生み出している。
コリンエステラーゼ阻害薬の登場が,高齢者の受診動機に大きな影響を与えていると思われるのである。
Elderly people are worried about change in their cognitive functioning. Since cholinergic therapies for Alzheimer's disease have been developed and widely accepted, elderly people come to visit clinics to seek medical advice if such a subtle change in cognitive ability may represents an early manifestation of Alzheimer's disease (AD). If they are likely to develop dementia or AD, they want to receive medical treatment as soon as possible to prevent further loss of cognitive functioning so that they can live independently as long as possible.
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