患者の論理・医者の論理13
よいことについて
浅井 篤
1
1京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療倫理学分野
pp.438-441
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100897
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Case
Bさんは,脊髄内頸部海綿状血管腫の破裂のため,四肢麻痺となった43歳の女性である.Bさんは自力で動くこともできず,血管腫破裂以来,約1年間人工呼吸器に依存し,この状態から回復する可能性は1%未満と推定されていた.Bさんの病状は安定し,末期状態ではなく死が切迫しているわけではなかった.Bさんは医師らに人工呼吸器の打ち切りを求めたが,医師らはBさんの希望に応ずることを躊躇していた.そのため,彼女は人工呼吸器によって与えられている侵襲的治療は不法であると主張し,裁判所に人工呼吸器の打ち切りの許可を求めた.裁判所は,Bさんは生命維持治療への同意を与えるまたは拒否するのに必要な意思決定能力を有していたこと,Bさんの意思に反する人工呼吸器は不法な侵襲行為であると述べた.Bさんは裁判所による許可を得て,本人の希望により人工呼吸器を外され死亡した1~4).
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