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世界中の医学校の教育目標に必ずといってよいほどあげられるもののひとつに,生涯学習者(life-long learner)として育つ,ということがある.日本において生涯教育というと,大抵は,自分の専門領域に関するup-to-dateを保つということが,まず思い浮かぶであろう.たとえば,消化器内科なら,学会や地方会への参加や発表,国内や国外の学会誌や専門誌の購読といったことが生涯学習とされている.あるいは,主に開業医を対象とし,レクチャーを主たる教育方略とする講習会への参加というようなイメージもあるだろう.
しかし,諸外国ではかなり事情は異なっている.医学教育学の世界では生涯教育に関する研究がさまざまに展開されており,いわば,生涯教育に関するエビデンスも蓄積されている.それらを見てみると,従来の生涯教育が自分の得意なところ,あるいは興味のある領域に関して学習し伸ばしていくものであったのに対して,現代の生涯教育は,自分の学習ニーズを評価して行うということ,すなわち,自分の「弱点」をみつめ補強するというニュアンスが強くなっているのである.生涯教育という言葉も,con-tinuing medical education(CME)からcontinu-ing professional development(CPD)が主として使われるようになっている.前者は医学における知識や技術に関する教育というニュアンスが強い.しかし,後者は,医師というプロフェッショナルが,知識や技術に関する専門家ということにとどまらず,コミュニケーターであり,マネジャーであり,また反省的実践家1)(reflective practitioner)でもあるという認識に立っている.
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