特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第5章:感染症
外来での発熱患者に「とりあえず抗菌薬」は危険である
日馬 由貴
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1兵庫県立尼崎総合医療センター小児総合診療科・小児感染症内科
キーワード:
抗菌薬
,
副作用
,
薬剤耐性
,
腸内細菌
Keyword:
抗菌薬
,
副作用
,
薬剤耐性
,
腸内細菌
pp.509-511
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_509
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外来で診察した発熱患者に何も考えずに抗菌薬を処方することは,初対面の相手に「老けてますね」と言うのと同じくらい,無神経かつ有害な診療行為である.これが抗悪性腫瘍薬であれば,場所の特定できない悪性腫瘍に「とりあえず5-FU」とはならないであろうが,抗菌薬ではこのような診療プラクティスが平然と行われてしまう.それは,抗菌薬の優れた選択毒性が理由であると考えられる.つまり,抗悪性腫瘍薬は自分自身の細胞(腫瘍細胞)を標的とした薬であるため副作用が多く,そう安々と患者に使用できないが,抗菌薬は,たとえばβ-ラクタム系であれば,ヒトには存在しない「細胞壁」を標的とした薬であるため,人体にとって害(副作用)が少ない.「抗菌薬は副作用が少なく,安全だ」という考えが,抗菌薬が安易に処方され,患者に投与されてしまう結果に結び付いている.
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