総合外来
下肢静脈瘤に起因する肺塞栓症―プライマリ・ケアにおける呼吸困難・胸痛症状の鑑別診断として
石川 雅彦
1
,
前沢 政次
1
,
森本 典雄
2
1北海道大学病院総合診療部
2治恵会北見中央病院外科
pp.986-987
発行日 2003年11月1日
Published Date 2003/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100742
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Case
呼吸困難・前胸部痛を呈した下肢静脈瘤の1例
患 者:64歳,女性.
主 訴:呼吸困難,前胸部痛.
現病歴:1996年5月頃より,坂道を登る時に時々息苦しさや前胸部痛が出現していた.9月30日,精査目的で受診.心疾患は認めず,肺血流シンチグラフィ検査(図1)で肺塞栓症と診断され,血栓溶解療法を施行し症状は軽快した.患者には右下肢静脈瘤を認めたが,凝固能や抗リン脂質抗体などの異常はなく,下肢静脈造影で深部静脈血栓症も認めなかったため,静脈瘤内血栓による肺塞栓症と診断した.このため,下肢静脈瘤に対しては,右大伏在静脈高位結紮・切離と硬化療法を施行し,同時に肺塞栓症の再発予防として,下肢からの血栓捕捉を目的に下大静脈内にフィルター(Greenfield filter)を経皮的に挿入・留置した.以後5年6カ月経過するも,肺塞栓症の再発を認めていない.
下肢静脈瘤の診断と治療
下肢静脈瘤の診断では現在,下肢静脈造影検査よりは無侵襲のカラードップラー超音波検査が主流となり,静脈血流の評価が外来で簡便に行えるようになった1).また,治療では,以前は静脈抜去術(ストリッピング術)が主体であったが,現在では手術によらない治療法として,静脈瘤内に硬化剤を注入し,圧迫して瘤をつぶす硬化療法や,より低侵襲な手術(伏在静脈高位結紮)に硬化療法を併用した方法が主体となり,長期治療成績も比較的安定している2)(図2).また,ストリッピング術もより低侵襲な方法が開発された.どれも日帰り治療が可能な方法として普及しているが,合併症の対策や静脈瘤再発の問題も含めて検討が重ねられている.
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