JIM臨床画像コレクション
急性閉塞隅角緑内障
松村 理司
1
,
椎木 創一
1
1市立舞鶴市民病院内科
pp.568
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100646
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症例は76歳の女性.悪心と頭痛を主訴に午後11時半に救急室を受診した.家族に支えられながら,何とか歩けていた.同日の昼に急に左前額部に痛みが生じたという.市販の頭痛薬の服用で症状はやや軽快したが,夜になって「床の間の掛け軸が見にくくなった」のに気付いた.鼻水,くしゃみ,咽喉頭痛などの上気道症状は伴っていない.下痢や腹痛はなく,四肢の麻痺もない.高血圧症に対する降圧薬を年来近医で処方されているが,脳血管疾患や心疾患の既往はない.本人・家族ともに脳出血を心配している.意識は清明であり,会話も可能である.バイタルサインは,血圧136/88 mmHg,脈拍90/分,体温36.5℃であった.項部硬直はなく,胸・腹部にも異常所見はない.四肢の筋力,感覚,深部腱反射も正常であった.
悪心・嘔吐と頭痛に視覚異常を伴えば,急性閉塞隅角緑内障を忘れない.瞳孔,眼球結膜をチェックし,必要があれば眼圧を測定する.右眼は瞳孔4 mmで対光反射があったが,左眼(表紙写真)は瞳孔7 mmで中等度に散大して固定しており,対光反射はない.眼球結膜が充血しており,角膜浮腫(混濁)もみられる.外眼筋運動に異常はなかった.視野欠損はないが,左眼だけで見てもらうと周囲がぼやけ,「万華鏡を通して見ているようです」とのことであった.眼底検査では両眼ともに異常はない.念のために空気眼圧計で眼圧を測定すると,右眼圧の13.5 mmHgに対して左眼圧は57.3 mmHgと著明に上昇していた.
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