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Case
1.初回X線写真で診断できなかった高齢者脊椎圧迫骨折の1例
患 者:84歳,女性.
現病歴:1週間前に物を持ち上げ軽度の腰痛を生じ,徐々に起きあがりが不可能となり来院.X線では異常がなかった.数日の入院安静で離床が可能となり退院したが,1カ月後痛みが残っており,X線再撮影で第2腰椎圧迫骨折が見つかり,骨粗鬆症の治療を開始した.
高齢女性で,圧迫骨折を疑いX線撮影を行ったが,診断できなかった.1カ月後再評価を行い,圧迫骨折と診断され治療が開始されたもので,ガイドラインに沿った診療経過となった.
2.馬尾症候群の尿閉が手術の遅れで回復しなかった1例
患 者:52歳,女性.
現病歴:両下肢のしびれが以前からあったが,急に下肢の脱力,尿閉を生じ近医を受診し導尿を受けた.翌日も尿意がなく同医で尿道カテーテル留置のうえ紹介来院した.両下肢の知覚障害,筋力3,肛門括約筋の弛緩がみられ,緊急MRIでL4/5の狭窄症による急性馬尾症候群と診断.同日緊急手術を施行し,筋力はほぼ正常に復したが尿閉は改善しなかった.
急性馬尾症候群は緊急除圧手術が必要な病態であり,救急受診させるべきであった.
米国では人口の90%が生涯に腰痛を経験し,年間200億ドルの医療コストを要しているとされている.以上の背景から,米国のAgency for Health Care Policy and Research(AHCPR,現Agency for Healthcare Research and Quality : AHRQ)によりClinical practice guideline : acute low back problems in adultsが1994年に公表された1).英国のRoyal College of General Practitioners(RCGP)からAHCPRガイドライン以後のエビデンスを取り入れて,Clinical guidelines for the management of acute low back painが1996年に出され2),1998年と2001年に改訂が行われている.その後の各国のガイドラインもAHCPRのものと大きな差はない.
英国では,活動性や運動を推奨するガイドラインに沿った腰痛治療を行う一般医が増えてきたと報告されている.一方,腰椎手術の比率が高い米国では,外科医からの批判があり,現在ではAHCPRガイドラインは廃止されている.最近オーストラリアで,ガイドライン適用について訓練を受けた医師と通常の一般医を比較して,腰痛の治療成績とコストの両面で,ガイドラインを遵守した群が有意に優れていたと報告された3).
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