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Question & Answer
Q:感覚神経の神経解剖生理で説明できないしびれの診断で留意することは?
A:心因性と決めつけないで,まず薬物の副作用を考え,服薬開始時期を確かめたり,医薬品情報に目を通す.次に全身性疾患との関連を考察する.その後,自律神経や運動神経の関与も想起する.
しびれ(異常感覚)とは「自発的に生ずる異常な自覚的感覚」と定義することができ,その原因や疾患は表1に示すように多岐にわたる.本稿でいう“不定のしびれ”とは,しびれのうちでその一次的原因が感覚神経系にないものの多くの場合と,一次的原因が感覚神経系にあっても神経障害との対応が明瞭でない場合を指す.前者の中では,自律神経の関与が大きい病態と心因性の病態がとくに重要である.後者にはmigrant sensory neuritisなどの稀な疾患が含まれる.不定のしびれの中には薬剤の関与が疑われるものがあるが,機序としては両者ともありうる.
症例から学ぶ不定のしびれ
Case 1
患者:32歳,女性.
病歴:1998年11月末(28歳時),背部痛,ついで腹痛,下痢,両手掌のピリピリするしびれ感が出現してきた.3~4日後,某病院整形外科に入院.3日目に首以下の全身に海底に沈められたような違和感と感覚鈍麻が出現し,さらに発汗減少,立ちくらみもみられるようになった.10日後には,尿閉が出現し,その後一定時間ごとの排尿で対処するようになった.明確な診断を告げられないまま退院し,1年間同院で経過が観察された.この間に体重が50 kgから30 kgに減少した.心因性とも考えられ,精神科の診察も受けた.
2000年4月以降,別病院神経内科で経過観察されていたが,02年4月の脊髄MRIにて頸髄後索に異常信号がみられ(図1),脊髄腫瘍が疑われて同年5月A大学病院脳外科に紹介され,入院した.入院時,妄想・幻覚・感情失禁著明で,リスペリドンでコントロールされた.精査にて外科的疾患が否定され,6月神経内科に転科した.
転科時身体所見:全身の軽度の筋力低下,四肢腱反射消失,顔面以下の感覚低下,重度の起立性低血圧,排尿・排便障害,全身の発汗低下.
検査所見:上記脊髄MRI所見以外に,各種自律神経機能検査にて広汎な障害がみられた.
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