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Question & Answer
Q:部下のメンタルヘルス不調を早くみつけるには?
A:日頃から部下と良好なコミュニケーションを図りながら,いつもと違う部下(勤務状況,言動など)の存在に早く気づくこと.
わが国の経済環境はめまぐるしく変化し,また,技術革新の波によって職場のIT化が急速に拡大しているなか,ストレスを感じる労働者が増加している.厚生労働省の「平成14年労働者健康状況調査の概況」1)において,「普段の仕事での身体の疲れの程度」の問いに対して,72.2%が「疲れる」と回答している.また,「仕事や職業生活に関する強い不安,悩み,ストレス」については,61.5%が「ある」としている.このような状況下,平成10年より自殺者が急増し2),また過重労働による過労死や過労自殺が社会的な問題となっている.これらの対応策として,国は,「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」や「過重労働による健康障害の防止のための総合対策」などを策定し,事業者などに対してその普及啓発を進めている.また,平成17年には,労働安全衛生法が改正され,平成18年度から過重労働者に対する医師の面接が事業者に義務付けられることとなった.本稿では,産業医の視点から,職場におけるメンタルヘルスケアの対応について述べてみたい.
職場の健康管理の考え方
労働者の健康管理は,労働安全衛生法で定められており,その基本は健康診断である.事業者は,健康診断結果に基づいて,個々の労働者に対して就業上の措置を講じ,従事する業務によって心身の健康が損なわれないように配慮しなければならないとされている.その基本的な考え方は,労働安全衛生法第65条の3の「事業者は,労働者の健康に配慮して,労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない.」に表現されている.しかし,事業者や上司である管理監督者は医療職ではないので,医学的な判断をすることはできない.したがって,職場における健康管理の基本的な考え方は,業務についての指揮命令権のある管理監督者は,常日頃から部下の勤務状況や言動などに注意し,業務遂行能力の低下など,いつもと違った部下(勤務状況や言動)に早く気づくことである.そして次に,その部下と面談し,傾聴し,その結果,健康上の問題であると判断した場合,またはその判断に迷う時には,専門家(産業医など)に相談し,その意見を求め,受診勧奨や就業上の措置を講ずることである.そして,復職時やその後については,主治医や産業医と連携して,就業上の措置などによって,再発予防に努めることであるといえよう.
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