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この連載では「診断推論」について研究的な視点を織り交ぜながら,どのように役立つかを共に考えてきました.診断推論領域の研究は非常に本質的かつ膨大な領域であるため,重要性については一般的に認識がなされているものの,なかなかその全貌が明らかになるところには至らないという印象があります.では,今後どのような領域に研究の展望が開けそうかという点に少し触れてみたいと思います.
領域ごとの理解内容の違い
私が8年前,最初に抱いた疑問は未だに解決しないままになっています.その疑問とは,「循環器内科医は循環器内科領域については非常に診断精度が高く,リウマチ・膠原病領域についてはそれほどでもない.リウマチ・膠原病内科医はその領域の診断精度が高いが,循環器内科においてはそうでもない.ところが,それぞれの専門領域の医師が当該領域の経験を積んでいるということはともかくとして,各専門医の学び方,考えるプロセスは微妙に異なっているのではないか」という点でした.たとえば,循環器内科領域においてはそれを理解するための基盤となる解剖学,生理学,病理学,薬理学には非常に明確な部分が多いです.身体診察についてもこれらの基盤との関わりがかなり明確になっています.一方,リウマチ・膠原病領域においては免疫学や副腎皮質ステロイド薬の薬理学は基盤になるでしょうが,循環器内科の基盤とはかなり様相が異なります.皮膚科所見の記載法,関節所見の診察法については,リウマチ・膠原病領域の診断やマネジメントに深く関わっているでしょう.これらの違いは,総合診療医として3~5年目に内科ローテート研修をしていた自分にとって,どのように後輩にアドバイスすればいいかという本質的な悩みでした.
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