レジデントCase Conference
発熱と意識障害で搬送され著明な高ナトリウム血症を認めた47歳男性
仲里 信彦
1
,
松永 諭
1
,
須磨崎 さやか
1
,
仲井 盛
1
,
小西 竜太
1
,
坂本 和太
2
,
徳田 安春
1
1沖縄県立中部病院内科
2岩手県立中央病院内科
pp.840-843
発行日 2005年10月1日
Published Date 2005/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100177
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今回の症例は,救急室初療医が自傷行為で以前に診察した患者が,発熱と意識障害を主訴に紹介搬送されたケースである.救急室再搬送時の患者は明らかに重症であり,意識障害と発熱,さらには呼吸数も著明に増加していた.初療医はGCS 7点以下の意識障害かつ頻呼吸がみられたため,酸素投与を行いつつ,おおまかな身体所見と神経学所見をとり,採血およびX線検査をオーダーした.上級医をすぐに呼び,意識障害とI型呼吸不全の診断のもと気管内挿管を行い,頭部CT検査と脳髄膜炎の除外のため髄液検査を施行した.頭部CT所見(図1)では明らかな出血や脳梗塞はみられなかったが,びまん性の脳萎縮がみられ,アルコールやビタミン欠乏を含めた慢性的な代謝性疾患に伴う影響を疑った.髄液検査は感染を思わせる明らかな異常を認めなかった.
しかし,驚くことに緊急生化学検査からはNa 199 mEq/lという著明な上昇があり,BUNとCreの上昇もみられた.初療医は意識障害の鑑別を表11)に照らし合わせながら行い,①敗血症,②高ナトリウム血症(以下,高Na血症),③アルコール離脱症候群,④尿毒症,⑤急性薬物中毒を鑑別としてあげた.アルコール依存症でもあることから肺炎桿菌と肺炎球菌をカバーする抗菌薬を選択し,中心静脈ラインを確保して循環動態をモニタリングしながら,補液と尿測を行うこととした.痙攣があれば,まずジアゼパム投与で対処する予定とした.急性薬物中毒に関しては前医からの情報でもCaseに示した薬剤以外の使用はなく,違法薬剤の検出もされなかった.初療医はこの著明な高Na血症の原因と治療に関して,上級医へコンサルトした.
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