- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Case
患者:頻呼吸が目立つ,89歳,男性.
家族歴:特記事項なし.
既往歴:32歳で胸膜炎,85歳で右大腿頸部骨折,87歳で前立腺肥大.
現病歴:1週間前からの右臀部痛を主訴に内科外来初診となる.歩くと痛みが増強する.食欲は良好で腹痛はない.咳,痰,呼吸困難,動悸もない.身体所見では体温37.8℃,血圧122/72 mmHgで,頻拍(118 bpm),頻呼吸(40 bpm)がみられた.両側下肺野でわずかに湿性ラ音が聴取された.胸部X線写真は吸気不足だが浸潤影はない.CRP>7.0 mg/dl,WBC 12,000/μlで急性気管支炎の診断で入院となった.
入院時の身体所見:結膜に貧血,黄疸なし.頸部リンパ節なし.甲状腺腫なし.胸部は頻拍,頻呼吸があり,右下葉に一致して湿性ラ音が聴かれる.腹部は平坦で軟.浮腫なし.
入院時検査所見:WBC 13,100/μl(St 3%,Seg 69%,Ly 26%,Mo 1%,Eos 1%,Ba 0%),RBC 364×104/μl,Hb 12.3 g/dl,PLT 44.4×104/μl,ESR 75 mm/時間,CRP 10 mg/dl以上.AST 85 IU/l,ALT 79 IU/l,LDH 348 IU/l,CPK 62 IU/l.TP 6.0 g/dl,Alb 2.7 g/dl,Cr 0.7 mg/dl,BUN 3.2 mg/dl.ガラス板法8倍,TPHA 640倍.HA抗体IgM陰性,HCV抗体陰性.CMV抗体IgM陰性,EBV抗VCA-IgM抗体陰性.
入院後の経過:抗生物質点滴で一度解熱したが,抗生物質終了3日後,入院11日目に再度発熱し,この時点で原因不明の発熱として診断を見直すことになった.WBC 14,400/μlでCRP 9.7 mg/dlと炎症反応が著明で,AST 51 IU/l,ALT 79 IU/lと軽度の異常があり,尿一般と沈fは正常であった.ツベルクリン反応は8 mmであった.腹部超音波検査ではガスが多く十分観察できなかったが,脊柱の右側に粗大病変がみられた.入院11日目に行われた腹部CTで右腸腰筋内に膿瘍と考えられる大きな病変を発見した.あらためて腹部,背部を診察すると,回盲部に圧痛があり腫瘤を触れた.右背側には皮膚の発赤と波動があった.この時点で右腸腰筋膿瘍と診断し,入院16日目に経皮的ドレナージを行い400 mlの悪臭のある膿を得た.その後の経過は良好で,入院25日目にドレナージチューブを抜去し,入院36日目に退院となった.注腸造影で虫垂が描出されないことから,虫垂炎に由来する腸腰筋膿瘍と考えた.
診断:腸腰筋膿瘍!!
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.