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水強調画像(MR hydrography)はMR画像の一種で,きわめて強いT2強調画像を撮影し,静止した(あるいは,流れがあったとしてもきわめて遅い)水信号のみを信号源として収集し,多くは3次元再構成を施しつつ,その管腔構造の内腔を描出し,間接的に壁の評価を行う管腔画像(luminography)のことである.したがって,静止水を容れたいかなる管腔構造もこの撮像法による検査対象となりうる.今までに,MR myelography(MRM),MR cisternography(MRC),MR cholangiopancreatography(MRCP),MR urography(MRU),MR sialography(MRS),MR hysterosalpingography(MRHSG)など,さまざまな応用がなされている.これらMR hydrographyに共通する特徴は,体内の水成分を信号源としているため,管腔に造影剤を注入する必要がないことである.したがって,造影剤注入に伴う侵襲的な手技が必要なく,撮像にあたり技術的熟練も不要で,化学物質としての造影剤を使用しないため腎機能への負担がなく,アレルギー反応の心配も皆無である.また,管腔への造影剤の圧入やカテーテル挿入といった介入を行わないため,真に生理的なイメージングといえる.ただし,この画像の解釈にあたり注意すべき点として,当該管腔構造の描出にあたり,積極的に管腔内圧を上昇させているわけではないので,生理的に虚脱している管腔の描出能が制限され,それを病的狭窄と混同する可能性がある.また,水でありさえすれば信号としてとらえることから,その描出は非特異的であるので,たとえばMR urographyやMRCPで腹水が存在すると,これらが背景信号として画像にオーバーラップしてしまうため,解釈を誤る危険性がある.この背景信号の抑制のための手立てが種々報告されている.たとえば,①尿路や静脈,リンパ管の信号を抑制するために,ガドリニウム造影剤を経静脈性に投与したのちに撮像する,②消化管の信号を抑制するために,撮像前に比較的高濃度の酸化鉄アンモニウムの経口投与を行う,などである.
撮像法は,短時間できわめて強いT2強調画像が得られるパルスシーケンスを使用する.たとえばfast spin echo sequence(RARE法,turbo spin echo法,etc.)とそのvariantであるSSFSE(HASTE,etc.),SSFP sequenceとそのvariant(FIESTA,PSIF,true-FISP,balanced-FFE etc.)などが主流である.撮像目標とする構造を含むように,比較的厚い撮像断面(slabという)で投影画像として観察するsingle thick slab法や,薄いスライスを多数撮影して再構成するmultiple thin slice法がある.Single thick slab法ではきわめて短時間での撮影が可能なので,時間分解能を要求される場面で使用される.すなわち,呼吸性移動のある部位では,息止めが不可能な被験者や,呼吸が不安定である被験者に対して用いられる.また,薬理学的介入や力学的介入に対する反応を観察する場合などに用いられる.薬剤による介入では,分泌刺激後の撮像が行われる.すなわち,分泌刺激は尿路では利尿薬,膵管ではセクレチン,唾液腺では酸性物質などを利用して行われる.
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