増刊号特集 泌尿器科手術における合併症管理のすべて
Ⅱ.術式別にみた術中・術後合併症の管理
D.開腹的手術
3.腎の手術
腎移植術
徳本 直彦
1
,
田邉 一成
1
,
東間 紘
1
Tadahiko Tokumoto
1
1東京女子医科大学泌尿器科
pp.116-124
発行日 2001年3月30日
Published Date 2001/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413903198
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1 はじめに
すべての外科手術にはその手術が何を目的として行われるのか,そしてそのためにはどのような注意が必要かという一貫した原理や理念が存在する。腎移植術においても,生体腎ドナーの腎摘出術およびレシピエントの腎移植術には術前・術後を含めきわめて大切なポイントがある。腎移植術における目的は,ドナーから摘出された腎臓がレシピエントへ移植されたのちも正常な腎機能を発揮することである。そのためには手術侵襲などによる腎への影響を小さくするとともに,術前・術後の輸液などを十分に行い腎機能の保護に努めることが大切である。さらに,移植後ドナー腎側の要因による合併症を起こさないように細心の注意を払うことも必要である。
生体腎移植術の特異性は,ドナーがまったくの健康で,命の贈り物である腎臓の提供を希望するボランティアであるうえ,この手術により何ら自らの利益を得るものではなく,むしろ負の医療を受けるということである。したがって,その安全性は絶対といっていいほど保証されなくてはならない。よって,ドナーの安全性と腎機能の保護といった2つの大原則を貫くためには,特に手術に習熟することや,腎生理学的知識に基づいた術前からの細かい全身管理が要求される。
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.