増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅲ.疾患別画像診断
4.先天異常
(1)腎臓
腎杯憩室
入江 啓
1
,
真下 節夫
1
Akira Irie
1
1北里大学医学部泌尿器科
pp.216-219
発行日 1999年3月30日
Published Date 1999/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902592
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1 はじめに
本疾患は小腎杯から細い交通路により連続した嚢胞状の空洞であり,移行上皮により覆われている。男女差や左右差はなく,1,000例の尿路造影に対して小児では3.3例,成人では4.5例の割合で観察されると報告されている1)。上腎杯での発生頻度が高いとされるが,いずれの腎杯でも観察される。これらの多くは腎杯に交通しており,Type Ⅰに分類される。一方,より大きくまた腎盂に直接開口したものはType Ⅱに分類され,より臨床症状を伴いやすい。憩室形成の原因として,先天性と続発性の両者が考えられている。先天性の病因として,胎生5mmの時期に3,4次尿管が消失せずに残存し,さらに尿の逆流圧による拡張で憩室が発現するとされる。小児と成人で発生率が同様であることからこの病因は支持されている。続発性の憩室形成の病因としては,限局性の実質内膿瘍の排泄,腎杯内の結石や炎症,腎杯頸部狭窄,外傷などが考えられている。一般に,小さい腎杯憩室それ自体は無症候性で偶発的に発見されることが多い。しかし,特に尿の腎杯への通過障害をきたした場合は,結石形成,milk of cal—ciumあるいは尿路感染症の発症頻度が増大し,疼痛,血尿などの症状をともなうことが多くなる。Timmonsら1)は72例の腎杯憩室症例を集計し,結石形成および反復性尿路感染症をそれぞれ39%に認めたと報告している。
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