増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅵ.メディカルエッセイ
画像診断
黒田 昌男
1
1大阪府立成人病センター泌尿器科
pp.168
発行日 1999年3月30日
Published Date 1999/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902577
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今から20年余り前,筆者が研修医であった時期には,泌尿器科領域の画像診断には排泄性尿路造影,逆行性腎盂造影,尿道膀胱造影,血管造影などしかありませんでした。超音波検査もその黎明期にあり,カラードップラーなどはなく,診断能力はあまり高いものではありませんでした。排泄性尿路造影などで腎細胞癌が疑われると,必ず選択的腎動脈造影が行われていました。精巣腫瘍の後腹膜リンパ節転移は,リンパ管造影と排泄性尿路造影の尿管の走行とから診断をしていました。今から考えるとかなりあやふやな診断であったといわざるをえません。CTが開発され,その画像から得られる情報がすばらしいものであることが理解されるようになると瞬く間に日本中に普及して,画像診断の能力は泌尿器科領域を含めて飛躍的に進歩しました。筆者も受け持ち患者のCTの画像を見て,侵襲の少ない検査で,しかも再現性および客観性のあるすばらしい検査であると驚嘆しました。
この再現性,客観性というのは,医学を自然科学の一分野とするのなら,きわめて重要なことであると思われます。なぜなら,再現性,客観性があるものが自然科学であり,それらが欠けたものは人文科学,芸術,伝統工芸になってしまうからです。医学が進歩するためには「自然科学」であることが重要で,「芸術」では学問としての進歩は望むべくもありません。これは画像診断のみにいえることではなく,他の検査法や手術手技にも当てはまります。
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