分娩体験記
職業的な慣れの恐しさを知る—第2児の死を経験して
井出 そと江
1
1東京都梅ケ丘保健所
pp.42-43
発行日 1966年3月1日
Published Date 1966/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203150
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"うめくまい,乱れまい"
初めての児を出産した時はもう40歳に手の届く年齢でした.しかし悪阻も大したことなく流産の心配もせず,産休に入るまでバイクに乗って家庭訪問をしていました.元来体格がよく肥っているせいか訪問先では妊娠と気付かれず(もっとも中年ぶとりとみなされていたのでしょうけど……)産休になっても昼寝をしたのは初めの4〜5日だけ,あとは元気に動き廻り毎日4階の住居までの昇降も平気.他人のことはハラハラ心配するのにわがことになると身体の重みも大したことなく頗る快調子でした.でも高年齢のため普通分娩はとても無理で,帝王切開術だと独りぎめして無痛分娩のための腹式呼吸を始めたのは出産1週間前でした.予定日より4日早く夜半に陣痛?30分ごとに目覚め3時頃出血を伴い,いよいよ始まったなと思い,朝8時になるのを待って病院に電話すると昼頃でよいとの返事,それから洗髪をし午後1時頃入院診療「一指開口明日の夕方ですね」と言われ病室に——.出産予定日が12月27日のため大病院では医師がお休みになることが多いと判断し,近くの個人病院を選んでいました.午後9時の面会時間ギリギリまで夫とともによく食べました.その頃は15分間隔の痛み,今から思えばいざさか危険なことですが,痛みがくると便所にとびこみしゃがんでいました.
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