連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・71
噂や思い込みが呼び込む「悪魔」
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.188-189
発行日 2010年2月25日
Published Date 2010/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101611
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突然の激しい頭痛
妊娠子癇を起こしたメイメイは22歳で,これが4回目の妊娠だった。今までの妊娠経過でもむくみはあったが,大事に至らなかった。健診に行っても特別,むくみに対しての説明や食事指導をされるわけでもない。ただ「足を上げて休みなさい」と言われるだけ,それだけのアドバイスをもらうために高い健診費を捻出する必要性を貧困の人々が感じるわけがない。前回の出産が何事もなければ,自然と人々は健診へ行かなくなる。
メイメイは34週に入ったある日,異常な頭の痛みを感じ,何かおかしいことに気づいた。むくみはすでに両足に著明に現れており(今までの妊娠でもむくんでいた),両手のしびれもひどく,冷たくなって握れないほどだったという。数週間前から慢性的にあった頭痛は,痛み止めを飲んでごまかしてきた。しかし,昨晩から続いている頭痛はどんどんひどくなって寝ていられない。無意識にうめき声を上げて頭を抱える妻の様子に危険を感じた夫が,やっと病院へ彼女を運んだ。その移送中に彼女は返事をしなくなった。病院では何度か子癇発作を起こしたらしい。帝王切開で赤ちゃんは出された。
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