交見室
前立腺肥大症の診療において気になる二,三の問題/腎の「中極」
伊藤 秦二
1
1医仁会武田総合病院泌尿器科
pp.256-257
発行日 1997年3月20日
Published Date 1997/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902003
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長年前立腺肥大症の診療に携わってきている間に,気にかかる問題がいくつかあります。そのうちの二,三を挙げて,諸賢の御批判を仰ぎたいと思います。
1.残尿感は前立腺肥大症の症状か
残尿感はしばしば前立腺肥大症の症状に入れられます。IPSSの項目にもその筆頭に挙げられています。しかし,厳密にいってこれは肥大症の症状でしようか。そうではなく,肥大症に随伴する前立腺炎(必ずしも細菌感染によるものではない)の症状ではないでしようか。少なくとも前立腺肥大症の症状の中では筆頭ではなく,末席におかれるべき症状と思います。少なくともfixed elementではなくvariable elementによる症状でしよう。何故こんなことにこだわるかといいますと,残尿感は確かに前立腺肥大症の患者の来院の直接の動機になることの多い症状ではあるけれども,たいていは前立腺炎に対する薬物療法で短時日で消失するものであり,患者はこれさえ消失すれば大いに不安や苦痛から解放され来院しなくなるケースも多いからであり,したがって残尿感が主訴の場合,その前立腺肥大症には外科的治療の選択にとくに慎重でなければならないと考えるからです。
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