手術手技 基本的な手術・8
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藤田 幸利
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1高知医科大学泌尿器科
pp.1055
発行日 1994年12月20日
Published Date 1994/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901351
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膀胱癌に対する膀胱部分切除術の適応については従来からもTURと根治的膀胱全摘除術の間で曖昧さがあった。単発,初発腫瘍でその存在部位が膀胱三角部以外であり,なおかつ浸潤度がT3αまでなどの条件があり,その適応となる症例には限りがある。桑原先生らは浸潤癌に対して動注化学療法と放射線療法をneo-adjuvant療法として施行してdown-stagingを計り,膀胱全層生検で浸潤度を判定したうえで膀胱保存手術を行う新しい選択肢を提案している。動注化学療法の抗腫瘍効果については著者らの記述や引用文献にもあるように良好な近接効果が認められている。しかし,この効果が必ずしも病理学的効果あるいは遠隔成績に結びつかない事例が見られる事も指摘されており,あくまでも術前療法としての選択肢ではないかと考えられる。浸潤癌に対して膀胱保存手術あるいは全摘除術を選択するかについては各術者のpolicy or philosophyであり,それぞれにmerit,demeritがある。術前療法が必ずしも効果がなければ手術の時期を遅らせ,ますますriskを増やす事にもなり,一方,neo-adjuvantが奏効し保存手術が可能となれば患者にとっては福音となるので,ある程度riskを背負った選択肢と言える。手術,検査,麻酔に伴うリスクに関しては膀胱全摘除術を比較しても小生は余り大きな差はないと考えている。
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