手術手技 基本的な手術・5
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石田 肇
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1日本大学医学部泌尿器科学教室
pp.739
発行日 1994年9月20日
Published Date 1994/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901287
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私が泌尿器科医としてまだ駆け出しの頃,すなわち今から20年位前には,腎実質に切開を加えるにあたってはいろいろと議論があり,特に出血の問題については誰もが非常に神経を使っていたと思う。そんな頃に田口先生の腎実質一層縫合術式のことを初めて耳にしたが,その時は随分と思い切りのいいことをやる人がいるものだと思った記憶がある。しかしその後泌尿器科医としての経験を積んでいくに従い,この術式は実は非常にしっかりとした理論に裏打ちされたものであることに気づき,田口先生の素晴らしいアイデアに感心するようになった。
すなわち,一層縫合により腎実質切開面を適切な圧,すなわち"腎主幹動脈圧よりもやや高い圧"でお互いに接触するようにしておけば,圧迫止血により腎実質からの出血はコントロールされるはずである。そしてこのような縫合は,縫合した切開面の血流の障害を最小限に抑え,また縫合面に異物を残すことがないため創の治癒機転の面から考えても理想的である。さらに一層縫合という比較的単純な操作で縫合を完了することができるため腎の阻血時間は大幅に短縮され,術後の腎機能障害の危険性も減少することになる。
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