交見室
泌尿器科と経済,他
田島 惇
1
1東京大学分院
pp.707
発行日 1993年8月20日
Published Date 1993/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901020
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最近,医療は内外とも大変厳しい経済的局面を迎えつつあるのを感じざるを得ない。米国では,クリントン政権(ヒラリー夫人)がヘルスケアの改革とそのコストをいかにして削減するかが政策の大きな柱となっている。先日の米国泌尿器科学会総会では,この問題が会員の危機感をもって論じられていた。また,演題発表でも,コスト問題抜きの治療法の選択は考えられないような雰囲気であった。例えば,この新治療に要する機器などは高価であるが,入院期間は従来法に比較し短縮化し,治療効果は持続し,トータルのコストを具体的に比較すると,新治療法の方がはるかに安くなるなどと強調されていた。ひるがえって,わが国をみてみると国立大学附属病院を中心とする大病院の巨額の赤字問題がマスコミを賑わしたのは,数か月前である。筆者の勤務する中規模の病院でも,財政再建委員会が頻回に開催され支出の削減が討議されている。
経済成長は鈍化し財政が硬直化した中で,限られたパイから医療費だけの突出した成長はもはや望めない情勢である。
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