発言あり シングルライフ
経済力と自活力をもった一人の人間として,他
荻野 澄子
1
1東京都福祉局総務部調査課
pp.581-583
発行日 1989年9月15日
Published Date 1989/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208008
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ニューヨークから戻った友人に久しぶりに出会った.外資系企業に勤める彼女にとって仕事の評価は厳しいが,能力について男女差別されることなく評価されるのでやりがいがあると,目を輝やかして向こうでの職業生活について話してくれた.しかしと彼女は言う.日本に居ると,否が応でも女であるということを意識させられ,また「結婚しているの? どうして結婚しないの?」という問いかけにうっとおしく,窮屈でしようがないと訴えた.
日本では,結婚して子どもを育てて1人前というノーマル信仰があるため,ある時期以降は,独身生活は"シングルライフ"という,ハイカラな言葉が流行してきてはいるものの,まだ市民権を得にくい状況にある.その一番の犠牲者は,戦中・戦後の混乱のなかで,独身を余儀なくされてきた女性たちではなかろうか.結婚の時期に相手となる男性は戦争に行き,また動員された兄弟の代わりに一家の大黒柱として,家を親を支えてきた独身女性たち.平和で豊かになってきて,自分の身を振り返る余裕ができた今,ひとりで老後を迎えるに至っているが,その過程で,幾多の偏見に遭遇し困惑したかなど,いろいろな手記にとどめられているが,ひとり暮らし女性の戦後史として忘れてはならないのではないだろうか.
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