Coffee Break
生体腎移植の陥し穴
東間 紘
pp.36
発行日 1993年3月30日
Published Date 1993/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900833
- 有料閲覧
- 文献概要
17年前,慢性腎不全で透析中のA君にHLAidenticalの弟をdonorとして生体腎移植を行った。腎移植後の経過は順調で,0.5g/日以下の軽度蛋白尿はあるものの,現在血清クレアチニン1.2mg/dlと移植腎機能良好で元気に働いている。蛋白尿は移植後2年位に始まり腎生検の結果IgA腎症と確認されている。ところが2年程前からドナーである弟に突如として1日3gを越す蛋白尿が出現し,腎生検の結果すでに荒廃したIgA腎症末期の所見であった。抗凝固剤その他の治療にもかかわらず腎機能は低下を続け,ついに昨年末透析へ導入せざるを得なかった。A君の原疾患が何だったか不明だが,もしかしたら2人ともIgA腎症だったのかもしれない。また移植腎のIgA腎症の発生,進展という観点からは興味深いことではあるが,しかし何とも悲惨な結果になったものと頭を抱えている。たとえ提供前の検査でなんの異常も認めなかったとしても,長い年月の間にはこのような事も起こりうることを,とりわけドナーが若い人の場合,十分考慮して慎重でなければならない。やはり,できれば,移植は死体腎移植が望ましい。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.