交見室
Direct costとIndirect cost,他
勝岡 洋治
1
1東海大学
pp.808-811
発行日 1991年9月20日
Published Date 1991/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900446
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筆者は昨年米国ボストン市に在住する機会を得た.初期アメリカ史に興味ある者にはこの町は垂涎の的であろうが,この町のもう一つの顔は名門ハーバード大学を中心とする数多くの学府がある学園都市である.ボストンの冬は大変きびしいと聞くが,冬が去って春がくると,この町も穏やかな風貌を取り返すようである.筆者はそんな東部を代表する町で1年を通じて最も気候のよい時期に研究三昧の単身生活を過ごした.その間に見聞きした事柄の中で,アメリカにおける研究助成金の実情について紹介してみたいと思う.
昨今,米国の逼迫した台所事情を反映して研究費は大幅に削減されている.風説によれば,金満国家日本からの資金援助を求めていると聞く.世界の頭脳が集まっているといわれるマサチューセッツ工科大学(MIT)にはこれまでにも日本企業が多額の研究費を拠出している.最近では某化粧品メーカがMITに対し10年間で1000万ドルの資金協力をすることが報道され,日本の経済力を誇示することになった.しかし10年振りに二度目の研究生活を体験した筆者の印象では,基礎研究には相変わらず潤沢な研究費が支給されているようである.今回,筆者が在籍した所は,内科学教室血液学部門の腫瘍学および分子生物研究室であったが,ボス個人の研究費で8名の人件費,設備機器,消耗品などすべてが賄われていた.このような制度は米国では普遍的であり,個人主義の徹底振りをこの方面でも知ることができる.

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