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編集後記
大家 基嗣
pp.912
発行日 2024年10月20日
Published Date 2024/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413208244
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歴史の教科書には肖像画が数多く掲載されていますが,他の肖像画とは一線を画す肖像画があります.機会があればぜひご覧いただきたい,私の一推しは「伝源頼朝像」です.
コロナ禍の2020年8月に初めて京都国立博物館で目にした時の感動は未だに忘れることはできません.とにかく大きい.装束は幾何学的なデザインで,太刀を差して笏も描かれていますが,限界まで削ぎ落とされたシンプルな構成になっています.肖像画は富と栄華を強調するため,装飾的なのが普通ですから,方向性が全く逆です.三英傑の肖像画を思い浮かべても,人物の性格は表現できているのでしょうが,芸術性を考えると,「伝源頼朝像」には及びません.むしろ「伝源頼朝像」は個性を表現しないようにして深い精神性を表現しているように感じました.この点においても方向性が逆です.鎌倉時代の肖像画が特殊なのか,それとも作者が特殊なのか,疑問が湧き上がりました.
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