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秋祭りのシーズンに人混みで賑わう原宿表参道を歩いていると,視界の先に神輿が飾ってありました。よくこんな場所に神輿を置くスペースがあるものだなあと思いながら通り過ぎたところ,神輿の置いてある場所が橋の上であるような錯覚を起こしました。あれっ,と思って振り返ったところ,欄干に気づきました。なぜこんなところに欄干があるのだろうか。もしや,この場所はかつて川が流れていたのではないか,と疑いました。欄干に交差している道は原宿キャットストリートという道路です。そういう眼でみると,キャットストリートは途中に公園が道の中央にあったりして不自然です。都市化とともに何か細工がされた道に見えてきました。埋め立てられたか,それとも暗渠になったか。
「地下鉄がどこから入ったかを考えると夜も眠れなくなっちゃうのですよ」という三球・照代の地下鉄漫才が1980年代に流行りました。当時の私達仲間うちでの正解は,「地下鉄は必ず地上に出てくるので,そこから入れる」というものでした。暗渠だったとしたら地上に出てくる場所があるはずです。キャットストリートを原宿の隣の渋谷駅まで歩いていきますと,それは意外にも渋谷駅東口を抜けてすぐ脇の東急東横線沿いにありました。川の水深は浅く,意外と汚染はひどくありません。川の水はビルの陰影を映しながらつつましやかに流れていました。両側にビルが迫っていて,川沿いを歩くことはできませんが,平行して明治通りが走っています。明治通りをワンブロックほど歩いたところに立て看板があり,読んでみますと,この川は渋谷川という名称であり,有名な「春の小川」が唱われた川であるということ,源流は新宿御苑であり,渋谷川は港区に入ると古川と名称を変え,浜松町で東京湾に注ぐと書かれていました。
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