特集 泌尿器科医のためのゲノム腫瘍学入門─時代に取り残されるな
企画にあたって
大家 基嗣
1
1慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室
pp.865
発行日 2018年10月20日
Published Date 2018/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206398
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がん診療において昨今「プレシジョン・メディシン」という言葉を頻繁に耳にするようになりました.2015年1月のオバマ前大統領の一般教書演説で触れられた概念です.がん治療にはおいては,個々の患者の遺伝子異常に基づいた治療を提供する個別化医療であり,非小細胞肺癌治療では現実のものとなっています(876頁).泌尿器科の日常診療では確かに遺伝子変異の差異によって治療を決めることは皆無です.だからといって,われわれ泌尿器科医は全く無縁であるかというと決してそうではありません.想定される場面をお示ししましょう.
保険収載された新規ホルモン治療とドセタキセル,さらにはカバジタキセルも使用しても効果がない去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)患者がいたとします.あなたがこの患者さんに「使用可能な薬剤はすべて使用しました.もう有効な薬はありません.これからは緩和治療に移行していきましょう」と提案したところ,患者さんが「がんゲノム外来」について調べられ,「費用がかかることは承知している.もし効果がありそうな薬剤を同定できたら自費でもいいので試してみたい」と尋ねられた際には,どう答えるべきでしょうか.同定できる可能性は何%くらいなのか(866頁),どのような遺伝子異常が多いのか(882頁,902頁),遺伝する可能性と家族にはどう知らせるべきか(872頁).ピンとこなくても大丈夫です.本特集をお読みいただければ,ゲノム腫瘍学を身近に感じることができるように編集させていただきました.
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