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臨床では予期しないことが必ず発生すると言っても過言ではないでしょう。外来処置中,手術中,術後,あるいは薬物の投与により,予期せぬ事態が起こったとき,じっくり考える余裕などありません。迅速に処置を施さなければ患者の生死にかかわることだってあり得ます。こういうときに力になるのは百戦錬磨の中堅医師の経験です。先輩医師の迅速な処置によって助けてもらった経験は誰しもがあるのではないでしょうか。しかし,先輩医師が必ず側にいてくれるはずはなく,また,経験がないから的確な処置ができなかったといっても言い訳にはなりません。不測の事態に日頃から準備しておく必要があります。しかし,急変への対応を座学で学ぶことは容易ではありません。通常の教科書や専門書は疾患ごとに解説されており,緊急時の処置に特化したチャプターはありません。このような背景を踏まえて,皆様のお役に立つような特集を組ませていただきました。執筆者の皆様は百戦錬磨の中堅の先生方です。このようなテーマを簡単に執筆できるものではないことは重々承知していましたが,快諾していただき,要点をわかりやすく解説していただきました。あらためて深く感謝申し上げます。
本特集は「急変」を具体的に例示し,1)概説,2)なにを考えるか,3)対処の実際,と順序立てて簡潔に解説しています。予期しない「急変」が本当に予期できなかったのか? 振り返って考えてみると実は予期できたものもあったかもしれません。そういう意味でも本特集をお時間のあるときに読んでいただくと参考になると考えています。「急変」を予防することは難しいかもしれませんが,患者の既往歴の細かな聴取,抜けのない内服薬のチェック,心肺機能等を含めた全身状態の把握などによって予期せぬことが予期できることへ変わる可能性があると考えています。
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