特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト
企画にあたって
大家 基嗣
1
1慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室
pp.273
発行日 2021年4月20日
Published Date 2021/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413207216
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
転移性前立腺癌に対しては,長らくLHRHアナログが1stラインの治療として固定され,本邦ではビカルタミドを併用するCAB(combined androgen blockade)療法が広く行われてきました.極端に言いますと,治療の個別化あるいは多様性を考えることはありませんでした.そのような状況下で起こった最初のパラダイムシフトは2015年のCHAARTED試験で,ハイボリュームの転移性前立腺癌に対して,ドセタキセルの併用が全生存期間の有意な延長を示しました.その後,LATITUDE試験も成功し,転移性前立腺癌をリスク分類して治療する個別化治療へシフトしました.さらにはENZAMET試験,TITAN試験によって,ハイボリューム・ローボリュームの区別なく,新規ホルモン治療薬のupfront治療が開始され,新たなパラダイムシフトが起こりました.腫瘍量の多寡については,オリゴ転移という概念も浸透してきました.原発巣,転移巣に対して放射線治療あるいは手術治療といった局所治療を適応とするオプションも考えられるようになりました.
ホルモン治療が中心の転移性前立腺癌に対して,ホルモン治療の耐性化を明らかにしていく過程で,さまざまな分子異常がクローズアップされました.そのなかで,初めて治療に結びついたのが,BRCA1あるいはBRCA2遺伝子異常を伴う去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対するPARP阻害薬であるオラパリブの承認です.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.