特集 泌尿器癌局所療法─局所を制する者は全身を制す
企画にあたって
大家 基嗣
1
1慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室
pp.1047
発行日 2017年12月20日
Published Date 2017/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206147
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「局所を制するものは全身を制す」というサブタイトルに込められた意味は多義的(ポリフォニー)です.1つ目は転移性の癌に対する局所治療です.古くには転移性腎細胞癌の腎摘除術,転移巣に対する転移巣切除が挙げられます.腎摘除術は肺転移巣の縮小をもたらすことが古くから知られていました.理論的背景としては,腎細胞癌が分泌するVEGF,IL-6などのサイトカインが全身の免疫環境を悪くするため,腎摘除術は免疫環境を改善するという考えです.昨今オリゴメタスターシスの治療が話題になっています.転移巣が少なければ全身療法のみに頼らず,原発巣と転移巣を積極的に加療する流れです.特に放射線治療を中心とする集学的治療が注目されています.放射線によるアブスコパル効果により全身の免疫が賦活化するとされ,免疫チェックポイント阻害薬との併用効果が期待されています.周藤先生と大西先生の論文をご参照ください.
2つ目は,より低侵襲な治療によって同等の制癌効果が得られるのならば,患者さんのQOLが維持されるということです.すなわち,「局所を制して全身をより穏やかに守る」ということです.実験的な治療であるため,十分な「理論武装」が必要です.特に前立腺癌に対するfocal therapyが注目されるなか,この「理論武装」に関しては金尾先生の論文をご参照ください.
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