特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉
企画にあたって
大家 基嗣
1
1慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室
pp.815
発行日 2020年10月20日
Published Date 2020/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413207029
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新しく泌尿器科の専攻医となった先生に私がお話ししていることは,「医師として成熟するためには,時間が必要.その対価として腕を上げていくのだ」ということです.充実した修業期間がその後の人生を左右します.経験がものを言う世界ではありますが,すべて自分が経験しないとダメなのかというと,そうではありません.「巨人の肩に乗っているから,遠くを見ることができる」(ベルナール・ド・シャルトル)という金言があります.もちろん,専門書から学ぶこともあるでしょう.それとは違った手段,金言から学ぶということ,つまり経験が豊富な先輩医師の肩にひょっこりと乗せてもらうという手があるのではないでしょうか? これが本特集の狙いです.
今回「泌尿器病理診断」(816頁)を執筆いただいた都築豊徳先生(愛知医科大学)は,「発見の旅とは,新しい景色を探すことではない.新しい目で見ることなのだ」(マルセル・プルースト)を引用されています.「意識することで見える風景が変わる」ということです.成熟とは,「これまで見えていなかったものが見えるようになる」ことだと思います.同じ風景を見ても,印象は1人ひとりが全く違います.意識しないと見えていないことを,私たちは日常生活でしょっちゅう経験しています.先日,私は奈良のお寺で白く咲き誇った萩の花を見ました.リフレッシュして東京に戻ると,何気なく通り過ぎていた道に萩の花が咲いていたのに気づくようになりました.
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