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癌を扱う数ある診療科の中で,PETを施行する件数が最も少ない診療科は泌尿器科ではないかと思います。2010年の診療報酬改定によって悪性腫瘍における病期・再発診断におけるFDG-PETが保険収載され,泌尿器科癌においても日常診療で施行されるようになりました。ちょうどその時期に本誌ではセミナーとして「泌尿器科医に必要なPET検査の知識—有用性と問題点」を全6回に分けて連載し(2010年7・9・11・12月号,2011年1・4月号),おかげさまで好評を得ることができました。セミナーの目的は,PET検査の基本を理解し,PET検査からの情報によって患者の治療方針を適切に判断することを主眼にしていました。連載から3年以上が経過し,私達の診療にもPET検査が浸透しましたが,病期診断のルーチンとして施行しているわけではないと思います。FDGは尿路から排泄されるため,尿路に発生した癌の早期の検出や原発巣の評価には限界があります。最も役に立つと誰しもが評価しているのは,セミノーマにおける化学療法後の残存腫瘍の検出ではないでしょうか。
このような現状を踏まえ,「新時代を迎えたPET診断」と題して,泌尿器癌における現状と展望を特集しました。この特集を企画するきっかけになったのは,2人の患者さんの診療経験からです。1人目は検診のPET-CTで前立腺癌の疑いで紹介されました。前立腺に高い集積があるもののPSAは正常値で,MRIでも異常はありませんでした。前立腺癌の早期発見にはFDG-PETは不向きです。前立腺癌の糖代謝は活発ではありません。画像も尿路と重なります。炎症のための偽陽性と判断しました。しかし,核種がコリンやアミノ酸だったとしたら,また,CTでなくMRIだったとしたら,違った評価だったと思います。そこで,本特集では新しい核種での可能性とPET/MRIの現状を執筆いただきました。
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