交見室
精系フィラリア症について,他
大井 好忠
1
1鹿児島大泌尿器科
pp.504-505
発行日 1981年5月20日
Published Date 1981/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203155
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フィラリア侵淫地であつた鹿児島県でも診ることがなくなつた精系フィラリア症の論文(臨泌,35巻2号,秋谷先生)を不可思議なものをみる思いで読ませて頂きました。岡元教授の全国集計でも乳糜尿患者は北海道を含む全土に分布し,過去には本邦全土にフィラリア症があつたことが推定されます,富山県の糸状虫陽性率が1958年3.26%であつたということは認識をあらたにさせられました。教室の幸地は沖縄県の調査で1975年に糸状虫保有者が皆無になつたことを報告し,私たちは本邦から新鮮なフィラリア症は絶滅したものと考えています。本例では睾丸(精巣)部熱発作はなく,34年前に右陰嚢水瘤があつたので少なくとも30年前からの既往と思われます。人体内のフィラリア親虫の寿命は約5年と考えられていますので,富山県における古い保虫者の1人と思われます。ミクロフィラリア(糸状虫)陰性であつたことは晩期フィラリア症でも新再感染がない限り陰性である事実とよく一致します。御地でも保虫住民にスパトニン投与が行なわれたのでしようか。当科においても初診時には必ずしも精索フィラリア症と診断し得るものではなく,結節が固く副睾丸炎との識別困難な場合には副性睾丸結核が疑われました。しかし,通常は除睾術を行なわずに結節のみ摘除可能でした。本例の手術時所見ならびに組織所見についてもう少し詳細にお尋ねしたいと思います。
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