交見室
膀胱全摘除術不能の進行膀胱癌に対する術中照射術について/嚢腫性二分脊椎症の排尿障害に対する神経温存的修復術について
松本 恵一
1
,
米山 威久
2
1国立がんセンター病院泌尿器科
2信州大学泌尿器科
pp.796
発行日 1985年9月20日
Published Date 1985/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204137
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本誌39巻5号掲載の膀胱癌の術中照射療法は私たちが電子線を利用して行いましたので,興味深く読ませていただきました。その中で一,二疑問点,問題点があり,また,私の術中照射に対する現在の考えもありますので一言述べさせていただきます。
田利氏らの術中照射第Ⅰ法,Ⅱ法の症例はほとんどがT3以上の症例でありますが,その予後が極めて良いのに驚きます。私のところではpT3の予後は根治的膀胱全摘除術を行つても5年生存率は35.8%と不良でした。そして,リンパ節転移陽性例はさらに不良ですが,リンパ節転移陰性例は良好な生存率を示します。このようなことから,術中照射療法症例ではT3と診断された場合でも,その正確な浸潤度は明らかにされ得ないという点,また,リンパ節転移の有無が不明であることなどから,真の進展度が確実とはいえないように思われるためその評価にかなり問題があるといえましよう。すなわち,prognostic factorが均一でないところに問題があるように思われます.私たちが行つた術中照射療法でも少数例ではありますが成績は不良でしたので,進行癌に対しての術中照射は不適と考えております。
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