手術手技
追加発言 2
石澤 靖之
1
Nobuyuki Ishisawa
1
1宮崎医科大学泌尿器科学教室
pp.209-210
発行日 1984年3月20日
Published Date 1984/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203763
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腹圧性尿失禁(Stress incontinence)などの尿失禁に対する治療法としては,中等度以上のものに対しては手術療法の適応となるものが多い。手術療法としては,1)尿道下を通す筋膜吊り上げ法,2)膀胱頸部または尿道造褶法,3)尿道延長または弯曲法,4)尿道または膀胱頸部の恥骨後面正常位復帰術,5)尿道膀胱遊離法などが報告されているが,主として用いられている方法は,1)の筋膜使用法と4)の膀胱頸部の恥骨後面正常復帰法である。私自身現在使用している方法は後者でいわゆるMarshall-Marchetti法であり,筋膜使用法の経験はほとんどないので,小川教授の筋膜使用法に関しての尿失禁治療法について批判を加えるのは差しひかえたいが,筋膜使用法による尿失禁の治療法はMarshall-Marchetti法に比して,その歴史が長いので文献的にみて一,二その私見を述べるに留めたい。
尿失禁のうち急迫尿失禁は腹圧を増すような状態,たとえば咳,くしやみなどの際,正常尿道から少量の尿が不随意的に漏洩する現象をいうが,原因的には括約筋のみならず骨盤横隔膜上層の筋膜の弛緩,膀胱頸部の支持組織の外傷,筋緊張に伴う頸部尿道支持組織の萎縮,尿道の膀胱への斜入などの説がある。したがつてこの病的状態の修復に対し,周囲筋膜組織を用いることが考えられるのは当然である。
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