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講座
泌尿器科系疾患の微細構造の見方(3)—腎細胞癌
The Appliance of Electron Microscopy in Diseases of the Urogenital Tract (3): Renal Cell Carcinoma
杉崎 祐一
1
Yuichi Sugisaki
1
1日本医科大学病理学教室
1Department of Pathology, Nippon Medical School
pp.227-233
発行日 1982年3月20日
Published Date 1982/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203311
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腎細胞癌は,1883年Grawitzにより副腎組織の腎組織内への迷芽より発する腫瘍として報告されて以来,Grawitz tumor, Hypernephromaの名前が広く使われてきた。しかし,Grawitzの報告した10年後の1893年,Sudeckにより腎尿細管上皮細胞由来のadenocarcinomaであるとの考え方が提唱された。この考え方は次第に多くの病理学者の支持を得るようになつていたが,1960年Oberlingによる電子顕微鏡的観察に基づいた腎主部尿細管上皮細胞と腎細胞癌のclear cellとの類似性の指摘までは必ずしも決定的なものではなかつた。
しかし,Oberlingの電子顕微鏡による報告以後,腎細胞癌と尿細管上皮細胞の類似性はSeljelid and Ericsson, Tannenbaumらによりラットの腎においても確認され,Grawitz腫瘍の尿細管上皮細胞起源説はより確かなものとして受け入れられた。さらに,主部尿細管上皮の特異抗原である刷子縁抗原および下部尿細管とHenle系蹄の細胞に特異的に存在するとされるTam-Horsfall抗原を用いた螢光抗体法的観察結果も腎細胞癌の腎主部尿細管上皮細胞由来を示唆しており,腎細胞癌の組織由来に関しては,ほぼ意見の一致が認められている。
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