文献抄録
腎細胞癌の下大静脈切除の予後について
pp.935
発行日 1981年10月20日
Published Date 1981/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203219
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腎癌が下大静脈へ腫瘍栓塞をおこしているものは従来予後が悪いと言われているが,最近の外科技術の進歩により積極的に下大静脈内の栓塞腫瘍の摘出,あるいは下大静脈の切除術などが行なわれるようになつて予後が改善されたとの報告を見る。しかし,下大静脈内の栓塞腫瘍の範囲と予後に関しての報告はない。著者らは1972年から1979年に24例の腎細胞癌症例について経胸腹膜的に根治的腎摘出術と下大静脈内の腫瘍栓塞に対する手術を行なつてその予後について報告している。これらの症例はIVPとその断層,腎動脈・下大静脈撮影,胸部X線,骨,肝のスキャンなどで他臓器,組織への転移を術前に確認し得ない者を選んだ。症例は右腎21例,左腎3例で,栓塞腫瘍の程度は腎静脈のみ9例(38%),下肝静脈の位置まで11例(46%),横隔膜またはそれ以上の者4例(16%)である。手術方法は腫瘍とともに下大静脈を切除したもの12例,その他は下大静脈切開で腫瘍を摘出し一部下大静脈壁も切除した。手術で完全に栓塞腫瘍を摘出し得たもの21例,他の3例は一部取り残さざるを得なかつた。手術に際してのリンパ節清掃で5例に転移を認めた。以上の症例の生存予後について見ると,術前と術中に栓塞腫瘍以外に転移を認めなかつた13例は平均生存月数は20ヵ月(3〜69ヵ月)で全体の平均(19ヵ月)とほぼ同様であつた。
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