文献抄録
下大静脈へ浸潤した腎細胞癌の手術経験
pp.440
発行日 1980年5月20日
Published Date 1980/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202946
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著者らは1970年より1977年までに72例の腎細胞癌を入院加療したが,そのうち4例に下大静脈へ浸潤した症例があり,過去に腎癌にて腎摘後残腎に発生し,かつ下大静脈へ浸潤した2例を合せて,計6症例の手術経過について述べている。
臨床所見として,症例は男性4例,女性2例で,全例血尿を認め,1例は肺血栓の再発があつた。精索静脈瘤は1例もなく,また下肢の浮腫,腹壁静脈の怒張例もなかつた。全例に選択的動脈撮影で腎腫瘍の所見を認め,2例に動静脈瘻があつた。Cavographyは3例に施行して腫瘍栓塞を認め,他は手術時に腫瘍栓塞を確認した。6例中2例に遠隔転移があり,1例は肺に,1例は反対側の副腎に転移を認めた。下大静脈の栓塞中,5例は横隔膜以下のもので,1例は横隔膜を越えて右心にまで達していた。手術は6例ともリンパ節清掃と腎および腫瘍栓塞除去術を施行し,到達経路としては,Tho-racoabdominal法1例,経腹膜法5例であつた。手術所要時間は2時間半から5時間で,平均3時間40分,出血量は平均4.1lであつた。術中,術後の手術による直接の死亡例はなかつたが,術後の合併症として肺血栓2例と1例に軽度の腎不全を認めたが,3週後に術前まで回復した。残腎に発生し腎摘した症例は術後透析を施行している。
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