Laboratory Practice 病理:細胞像からここまでわかる
体腔液(3) 転移性癌
堀内 啓
1
,
牛島 友則
1
,
松谷 章司
1
1NTT東日本関東病院病理診断部
pp.242-247
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101349
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はじめに
腹腔,胸腔などの体腔に液体が貯留する状態は腔水症と呼ばれる.この原因は,心不全や腎不全,肝硬変などの非腫瘍性疾患による場合と,腫瘍の体腔への転移による場合がある.両者の鑑別には,細胞診による悪性細胞の検出が決め手となる.
体腔へ転移する頻度が高い腫瘍を,小児と成人で男女別にまとめたのが,表である.小児では,胸腔・腹腔とも白血病・リンパ腫などの血液疾患と,小円形細胞腫瘍の頻度が高いが,成人では,腹腔では消化器癌や卵巣癌,胸腔では肺癌の頻度が高い.
体腔液中の腫瘍細胞は,もはやその由来した臓器を離れており,原発巣の細胞とは形態が異なってくる.体腔液中に浮遊して存在する腫瘍細胞は培養液中と同じような状態であり,多くの腫瘍細胞は類円形になる.したがって,本来の細胞形態学的特徴が不明瞭となる場合が稀ではない.
あらゆる腫瘍が体腔へ転移する可能性を持っており,そのすべてを述べることは,本稿では不可能である.したがって,頻度の高い腫瘍,鑑別診断上重要と考えられる腫瘍について記述する.
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