文献抄録
膀胱癌の術前照射後膀胱全摘症例の検討
pp.1034
発行日 1975年12月20日
Published Date 1975/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202076
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著者らは1971年に膀胱癌88症例について,その大部分の例に術前照射を施行後,膀胱摘出,回腸膀胱形成をして,その予後について報告した。この経験で膀胱乳頭腫症あるいはUICC分類でT2に属する膀胱癌では,照射後膀胱摘出しても放射線照射のみでも予後に差のないことを知つたので,その後はT3の癌症例を主体に,上記の治療法で臨床経過,予後を観察して報告している。経過観察し得た症例数は全部で131例である。術前の放射線照射方法は,腫瘍線量として計4,000radsを小骨盤腔に1日200radsとして約4週間で照射した。照射終了後1ないし2週間後に膀胱摘出と回腸膀胱形成術を施行した。リンパ節の清掃は特に行なわなかつた。著者は術前に双手診にて腫瘍浸潤度を判定し,これを照射後の摘出膀胱による組織学的検索と比較している。そして約60%の症例に照射による浸潤度の軽減が確認されたとしている。T3と臨床的に診断された33例についてみると,放射線4,000rads照射後では12例が明らかに臨床的に浸潤は軽減し,21例は不変と思われたが,摘出膀胱組織についてみると,この21例中9例は組織の線維化を癌浸潤と誤診したものであつた。すなわち33例中21例は放射線による浸潤の軽快が認められた。
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