文献抄録
結核性無機能腎の長期予後
pp.219
発行日 1971年3月20日
Published Date 1971/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413201130
- 有料閲覧
- 文献概要
抗結核剤の進歩により結核腎摘出の適応が最近では変わつて来たが,腎結核による敗血症,高度の出血,堪え難い疼痛,高血圧症あるいは悪性新生物が考えられる時には腎摘出せざるを得ない。従来腎結核病巣は血行感染性の活動病変をおこすので腎摘出がよいとされていたが,著者らの経験から十分な化学療法を行なえば結核性の無機能腎は必ずしも摘出の必要はないと考えている。
著者らは1945年以降,泌尿性器結核患者800症例を取扱つているが,この内270例の尿路結核中結核性の無機能腎22例の長期経過の観察について述べている。観察経過年数は1年から5年が7名,6年から12年が9名,13年から22年が9名となつている。いずれの患者も2年目までは毎3ヵ月に1度,5年目までは6ヵ月に1度,以降1年に1度の検査を行なつている。1956年以降は抗結核剤の3者併用で2カ年の化学療法を行なつた。これらの長期観察中無機能腎の摘出を行なつたのは3例であり,2例は偏腎性の高血圧の疑いで腎摘出をしたが血圧の下降はみられず,他の1例は悪性腫瘍の合併を考慮して摘出したが,腫瘍はみられなかつた。合併症として1例に変形菌混合感染による慢性腎盂腎炎で2年間の化学療法で治癒した症例があつたが,他には顕著な合併症はみられなかつた。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.