文献抄録
膀胱粘膜癌の臨床
pp.535
発行日 1970年6月20日
Published Date 1970/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200944
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著者らは1950年1月より1963年12月の14年間にMayo Clinicにて2,300例の膀胱癌を集計し,その内62症例の粘膜癌について臨床的観察を報告している。この62例について見ると,男女比は5対1で男性に多く,年齢は60ないし70歳台が76%を占めている。62例中41例は喫煙者であつた。初発症状としては顕微鏡的血尿を主訴としたもの7名で,半数以上が肉眼的血尿を主訴としている。膀胱粘膜癌の特異的症状としては頻尿,尿意促迫,排尿困難などの膀胱炎症状である。膀胱鏡的所見としては,粘膜の発赤と軽度に粘膜が隆起し顆粒状を示しており,病変部の境界は不鮮明である。一見しては膀胱炎所見と極めて類似している。生検による組織所見としては粘膜細胞の核に注目して見ると,核は比較的大きく濃染性時に細胞分裂像も散見される。基底膜の乱れはない。著者の症例では87%が悪性度2ないし3の移行上皮癌であつた。治療としては粘膜癌であるので診断確定後はすみやかに56名については経尿道的電気切除ないし焼灼を行なつたが,発生部位が広範囲に及ぶもの2名には放射線治療をし,3名は膀胱摘出,1名は部分切除を施行した。
予後について見ると82%が1年以内に再発を見ている。再発の病巣は初回の治療時と同様なものが大部分であつたので,経尿道的治療を行なつたが,病巣の広範囲にわたる症例4例は膀胱摘出を行なつた。癌の浸潤を認めた37名中24名は死亡した。
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