文献抄録
膀胱癌患者治療における粘膜多生検の意義
pp.318
発行日 1980年4月20日
Published Date 1980/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202928
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膀胱癌にて摘出された膀胱について,一見内視鏡的には正常と思われる粘膜にいろいろな程度の組織学的変化が見られることは種々報告されている。そこで著者は154例の膀胱癌患者について,内視鏡的に腫瘍の見られない粘膜部位の多生検を行なつて,その組織所見を述べると共に,この所見をもとに治療経験について言及している。一般に膀胱癌患者の粘膜にはしばしば発赤が見られたり,これに顆粒状変化,浮腫,カビ様外観を伴う所見があり,carci-noma in situの所見として癌の進展している状態と説明されることが多い。しかし,膀胱癌を以前にTURあるいは放射線照射で治療された症例では感染,壊死巣などの所見も,ca.in situと類似して両者の判別は困難である。この点について著者らは多数症例について検討を加えている。
症例は154例で,未治療の移行上皮癌56例,TUR後の再発例46例,放射線治療後の再発例52例である。生検部位は原則として天上,正中後壁,両側尿管口の上方1cmの4ヵ所とした。内視鏡所見は正常,発赤と血管増生および顆粒状,浮腫,赤色カビ状糊膜の3種類に分け,組織所見としては正常,粘膜増生,粘膜細胞の異形化1度,2度,癌(ca. in situ)の5型に分けて対比した.
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