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特集(増刊号の)2 腎不全
Ⅳ.腎不全の対策
2.腹膜潅流
腎不全に対する腹膜潅流の治療的限界
Evaluation of the Therapeutic Limitation of Peritoneal Dialysis for Renal Failure
上野 精
1
Akira Ueno
1
1東京大学医学部泌尿器科学教室
1Department of Urology, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.125-132
発行日 1969年12月25日
Published Date 1969/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200825
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はじめに
慢性腎不全に対する積極的な治療法としては,腹膜潅流や人工腎などの人工透析療法と腎移植が現在最も有力である。これらの方法がすでに実用段階にあることはいうまでもないが,医学的には必ずしも満足なものでなく,将来大幅に改良さるべき性質のものである。例えば腎移植における免疫反応の問題,人工腎における小型化の問題などが挙げられる。
腹膜潅流の歴史は他に較べて古いが,間歇的潅流法による慢性透析の開始は,人工腎の場合と同じく1960年代になつてからである。腹膜潅流は特別高価な装置を必要とせず,容易に施行でき,安全であるため広く使用されている。しかしその治療成績は人工腎に較べて劣つており,長期生存例も人工腎に較べ極めてわずかである。この原因として効率の低い点がまず挙げられるが,このため頻回の長時間にわたる透析がよぎなくされ,蛋白,アミノ酸などの喪失や感染などの合併症を起こし易い。次の問題は腹腔を如何に長期間にわたつて確保するかということである。腸管の穿孔や腹膜炎,それによる腹膜の癒着などで潅流不能となることが少なくない。
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