文献抄録
両側性のウイルムス氏腫瘍/睾丸腫瘍転移巣に対する化学療法
pp.932,965
発行日 1967年11月20日
Published Date 1967/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200285
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ウィルムス氏腫瘍の90%は6才以下の小児に発生するもので平均年令は3才である。乳幼児にはNeuro-blastomaについで腹部悪性腫瘍としては最も普通に見られるものである。この腫瘍が両側性に発現する頻度は1.4ないし10%といわれる。一般にウィルムス氏腫瘍で手術可能例の最善の治療法は如何にすべきかについては現在意見が統一されていない。ある人は腎別出前後の放射線治療を推奨し,ある人は術前照射を主唱している。手術可能のウ氏腫瘍の予後に関する統計観察では手術とその前後における放射線照射の併用,あるいは術後照射とActinomycinDの併用が最も良い成績を得ている。ウ氏腫瘍は治療後2年以内に転移巣の出現がなければ治癒したと考えられる。
しかし著者の以下述べる治験例からしても転移巣を必ずしも治癒せしめ得ないわけではない。腹部悪性腫瘍の放射線照射では放射線性腎炎の発生を考慮しなければならないが,その際の腫瘍線量としては両腎照射として5週間に2300rads以下が望ましい。著者の経験例は4才男子の右腎ウ氏腫瘍で1955年に右腎剔除と術後照射を施行して経過観察したところ,術後6カ月して残腎に同様腫瘍の発生を見た。この時は全く予後不良と考えられたが,残腎の正常と思われる部分を被覆して腫瘍部に3524radsの腫瘍線量を照射した。
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